軍用無線機『PRC-25/77』をしゃぶる
第5回 電波伝搬
第5回はPRC-25/77の使用している電波の周波数域帯のお話をしましょう。
はじめに
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第一回の記事内容で、右のような指摘がありました。ご指摘ありがとうございました&間違った
情報を記載して申し訳ありませんでした。
こういった指摘は大歓迎なので、お気づきになられた
方がいたらメールかBBSで教えていただけるとありがたいです。
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軍用トランシーバの送信部に使われている真空管は、送信時にしかヒータ電圧は掛かりません。
ですから、受信時に電気を食うというのは大きな間違いです。
PRC-10もPRC-6もそうです。
回路図をよく見てください。
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疑問

ワンス アンド フォーエバー
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先日「ワンス・アンド・フォーエバー」という映画を見に行きました。
その中のワンシーンで、訓練中の兵士がPRC(25か77かは不明)を使用して、ベトナムで行動中の
グリンベレーの無線を傍受するというシーンがありました。そのときチーム員のコミーより「あんなことできるんですか?」
ときかれました。前回書いたスペックによれば、8kmしか電波が届かない無線機の電波が、ベトナムから
アメリカまで届くなど考えられません。笑い飛ばしてしまってもいいようなシチュエーションですが、一応実話がベースになっている話なので、コミーも疑問におもったのでしょう。
では、実際には出来るのでしょうか?
結論から言うと出来ます。
但し、かなりの運が必要とされる上、歴史背景を考えると出来たかどうかはかなり微妙です。
以下に可能となる理由と、なぜ前述の但し書きがつくかをかいてみましょう。
ただ、私がかなり怪しい知識でかいているので、間違いがあれば教えて下さい。
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異常電搬
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不可能を可能にするキーワードは「異常電搬」です。基本的に無線機は出力パワーに応じて到達距離がきまります。
これは電波が発信元からの距離に応じて減衰していくからです。
ところが、電波は反射することによって、その到達距離が伸びることがあります。
この原理を説明すると・・・直接波や反射波の説明でスペースを取りすぎますので、割愛します。
ただ、「電波は反射することにより、遠くまで届くことがある」位の認識で十分です。
電波を反射する物質は実は結構自然界に存在するのですが、PRC25/77で利用できるような物はあまりありません。
ただ、いろいろな条件がかさなると大規模に発生します。
このときに通信すると非常に電波の到達距離が伸びます。
乱暴に言えば、これが「異常電搬」です。
異常電搬にはいくつかの種類がありますが、PRCの使用するVHF帯に関係するものとしては対流圏伝搬と電離層伝搬と呼ばれるものがあります。
対流圏伝搬とは文字通り地上から約10〜15kmまでの高さの対流圏と呼ばれる層での反射による伝搬現象のことです。
ラジオダクトや対流圏散乱がこれに含まれますが、今回は取り上げません。
一方電離層伝搬とは地球大気の上部にある電離圏での反射による伝搬現象のことです。
50Mhz帯を使用するPRCの場合影響を受けやすい現象で、アマチュア無線愛好家の間では6mバンドの魅力とも言われているそうです。
主にスポラディックE層とF2層がPRCには関係してきます。
この伝搬には他にもスプレッドFや赤道横断伝搬、赤道縦断伝搬やらD層散乱と盛りだくさんなのですが、PRCに大きく関連するのは
前述の二つなので、あとは割愛します。
スポラディックE層とF2層の説明については右に書き出したので、興味があれば読んでください。
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| スポラディックE層(sporadic E layer , Es) |
5〜8月にE層と同じ高度(約110km)に、局所的にしかも突然発生する電離層のことです。
無線マニアな方々には通常Eスポと呼ばれているものです。
青少年達の夢であるGスポットとは全く関係ないので、思春期の少年は残念がってください(謎)。
一回の反射で1000Km〜2000Km電波が飛ぶそうです。
multi hopやmulti skipと呼ばれる複数回の反射をした場合、3000Km〜6000Kmまで電波が届くそうです。
ただコレは条件がシビアで同じ時刻にちょうどいい場所にEスポが出現することが条件となります。
大体日本時間で10時頃と18時頃がよく発生するようです。
Eスポによる電波は非常に強力に受信できる場合が多いのですが、同時に非常に不安定でもあります。
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| F2層 |
F2層は高度約300kmに常時存在する電離層のことです。
短波無線などが主に使用しているのですが、PRCで使用されているVHF波は突き抜けてしまい、普段は利用することが出来ません。
ですが、太陽の活動が活発になり、黒点数が多くなると電子密度が大きくなりVHF波でも反射するようになります。
コレが使えるときの電波の到達距離は、1回反射で約4000km、2回目に反射するF2層の電子密度も高ければ約8000kmとなるそうです。
こちらは大変安定した電波状況だそうです。
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で、結論?

PRC-10
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冒頭のアメリカの訓練基地でベトナムの無線が聞けるかという問いですが、これまで述べたEスポかF2層が利用可能であれば十分可能です。
まず距離が稼げるF2層を考えてみましょう。
F2層を利用する場合、極大期(太陽の活動がもっとも盛んになる時期)前後の年の春秋期だと、短波無線並みの感度と距離が出るそうです。
NAM戦の頃の極大期は1969年です。ですが映画の時代の1965年は太陽活動極小期にあたり、F2層の利用は絶望的とかんがえていいでしょう。
冒頭の時代的背景とはコレのことです。
ちなみにこんな話でないと出てこない極大期ですが、極大期に入ると衛星を使用するもの(カーナビ・衛星携帯電話・TVの衛星海外中継等)はもろに
影響を受けます。特に微弱な電波でやりとりする衛星携帯電話はもろに影響を受けるので、イリジウムユーザーは気をつけましょう?
次にEスポを考えてみましょう。
Eスポの発生は日本の無線愛好家の間では大変なじみの深いものらしく、その発生期間前後の無線雑誌にはEスポのことで持ちきり・・・・・・・
だったんですよ。昔は(笑)。
最近は無線人気自体が絶滅に瀕している状態なので、書店の店頭で無線雑誌を見つける事のほうが、
コンディションのいいEスポにめぐり合うよりも難しくなってたりします。
ただ、Eスポはコンディションがいいのにめぐり合うとかなりの距離を稼げるのはたしかで、
アマチュア無線家のなかには日本−アメリカ間の交信に成功した人もいるそうです。
但し、これも固定アンテナ&条件のいいときのお話であって、映画の中にでてくるような状態で出来るかというと・・・・・・
残念ながら再現するのは難しいとおもいます。
なにせ相手側はPRC-25/77か下手するとPRC-10で、受信側もPRC-25/77+銅線使って作った即席アンテナという状態ですので受信できたのは奇跡にちかいでしょう。
まぁだからこそそれが出来た通信兵がいきなり大抜擢(というより地獄への片道切符の配給?)をされたのでしょう。
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最後に
今回はこれで終わりです。途中、えなり○ずき養成講座のようになってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
簡単すぎる説明でしたので、物足りなく感じた人もいるかと思いますが、無線マニア養成講座ではないので、
この程度でご勘弁いただければと思います。
また、途中映画に疑問を投げかけるようなことを書いてますが、話のきっかけに使っただけで、映画の出来に文句をつけているわけではありません。
むしろ映画はすごいよかったです。久々に泣きました。かなりお勧めです。どれくらいよかったかというと、見終わった後ガバメント嫌いの私が、
ガバメントを衝動買いしたくなっちゃうくらいしびれました。
次回は・・・またもや題材未定です。冒頭のような間違いの指摘でも大歓迎ですので、お便りいただけるとうれしいですね。